フィラリア症とは Gemini

フィラリア症(犬糸状虫症)は、一言で言うと「蚊が媒介して、心臓や肺の血管に細長い寄生虫(フィラリア)が住み着いてしまう病気」です。

主にワンちゃんの病気として知られていますが、実は猫ちゃんにも感染します。放置すると命に関わる非常に恐ろしい病気ですが、しっかりと予防すれば防げる病気でもあります。

基本的な仕組みやリスクを簡潔にまとめました。

 参考:https://www2.zoetis.jp/species/dogs/zoetis-filaria/

 


1. 感染のメカニズム

フィラリアは、目に見えないほど小さな幼虫の状態で蚊の体内に潜んでいます。

  1. 吸血: 感染した蚊が動物を刺す。

  2. 侵入: 幼虫が体内に侵入し、数ヶ月かけて成長しながら移動。

  3. 定着: 最終的に心臓や肺動脈に到達。成虫になると、長さ15〜30cmもの「そうめん」のような姿になります。

2. 主な症状

初期段階ではほとんど症状が出ないのが厄介な点です。進行すると以下のようなサインが現れます。

  • 咳が出る(運動後や興奮した時など)

  • 元気がなくなる、疲れやすくなる

  • 食欲が落ちる

  • お腹が膨らんでくる(腹水)

  • 尿が赤くなる(血尿:末期症状の「大静脈症候群」)

3. 犬と猫の違い

特徴 犬の場合 猫の場合
寄生しやすさ 非常に寄生しやすい 寄生しにくい(体内で死ぬことが多い)
主な被害 心不全などの循環器障害 肺の炎症(喘息のような症状)
診断 血液検査で比較的容易 診断が非常に難しい
リスク 慢性的に進行する 突然死のリスクがある

4. 予防が最大の治療

フィラリア症は、一度かかってしまうと成虫を駆除する際に血管が詰まるなどの大きなリスクを伴います。そのため、**「かからないこと(予防)」**が何より重要です。

  • 予防薬の投与: 蚊が出始めてから、出終わった1ヶ月後まで毎月投与します(錠剤、おやつタイプ、スポット剤など)。

  • 事前の検査: 予防薬を飲む前に、すでに感染していないか血液検査を行うのが一般的です(感染している状態で薬を飲むとショック状態になる危険があるため)。


豆知識

ちなみに、人間がフィラリアを持つ蚊に刺されても、基本的には人間の体内で成虫まで育つことはできないので、過度に心配する必要はありません。

大切なペットを守るためには、春先の定期健診と毎月の予防が一番の近道です。

フィラリア症の治療

フィラリア症の治療は、予防に比べて格段に難しく、ワンちゃんや猫ちゃんの体に大きな負担がかかるのが実情です。

治療法は大きく分けて「内科的治療(薬)」と「外科的治療(手術)」の2つがありますが、進行状況によって獣医師が慎重に判断します。


1. 内科的治療(お薬での治療)

心臓や血管にいるフィラリアを、お薬を使って少しずつ、あるいは段階的にやっつける方法です。

  • 成虫駆除薬の投与: ヒ素製剤などを使って成虫を殺します。ただし、一気に死滅させると死んだ虫が肺の血管に詰まって(肺塞栓症)命に関わるため、現在は非常に慎重に行われます。

  • ボルバキア治療: 近年主流の治療法です。フィラリアと共生している「ボルバキア」という細菌を抗生物質(ドキシサイクリンなど)で叩くことで、フィラリアを弱らせ、繁殖能力を奪ったり寿命を縮めたりします。

  • 長期的な予防薬投与: 強い駆除薬を使わず、数年かけてフィラリアの寿命(3〜5年)が尽きるのを待つ方法です。その間、病気が進行しないよう安静が求められます。

2. 外科的治療(手術)

心臓の中に成虫が大量に詰まってしまい、命が危険な状態(大静脈症候群)になった際に行われる緊急手術です。

  • 吊り出し手術: 首の血管から専用の特殊な鉗子(かんし)やカテーテルを入れ、心臓内の成虫を直接つまみ出します。

  • リスクと課題: 高度な技術が必要なため、対応できる病院が限られます。また、手術費用も高額(5万円〜10万円以上、検査・入院等含む)になりやすく、何より体力が落ちた状態での手術はリスクが非常に高いです。

3. 対症療法

すでに心臓や肝臓にダメージがある場合、その症状を和らげるために行います。

  • 強心剤・利尿剤: 心臓の働きを助けたり、腹水を抜いたりします。

  • 血管拡張剤: 血液の流れをスムーズにします。

  • 運動制限: 激しい運動は心臓の虫を暴れさせ、血管を詰まらせる原因になるため、治療期間中は「絶対安静」が必要です。


注意点:猫ちゃんの治療について

猫ちゃんの場合、体が小さいため手術や成虫駆除薬の使用が極めて困難です。死んだ虫が少しでも詰まると即死するリスクがあるため、基本的には炎症を抑える「対症療法」を行いながら、虫が自然に死ぬのを待つしかありません。

結局は「予防」がコスパ最強

治療には数十万円かかることもあり、治っても心臓に後遺症が残ることがあります。一方で、予防薬は月々1,000円〜2,000円程度。愛犬・愛猫の負担を考えても、予防に勝る治療はありません。